← ジャーナル
ブランドの方へ

外国人タレントのキャスティング — 発注前に押さえる勘所

在住か招聘か、ビザのリードタイム、競合条件、使用許諾の考え方まで — 外国人モデル・タレントを起用する際に国内案件とは違う「つまずきやすい点」を、東京のエージェンシーが実務目線で整理します。

外国人タレントのキャスティング — 発注前に押さえる勘所

国内タレントのキャスティングには慣れていても、外国人モデル・タレントの起用となると勝手が違う部分がいくつもあります。在住か招聘か、ビザのリードタイム、競合条件、そして海外エージェンシーとの「使用許諾」に対する感覚の差 — ここを最初に押さえておくと、進行が驚くほどスムーズになります。

東京で毎週この実務を回しているエージェンシーの目線で、勘所を整理します。

まず「在住」か「招聘」か

外国人モデルは大きく二つに分かれ、費用も動き方も変わります。

在住モデルは日本在住で、自分でスケジュールを管理し、複数の事務所に登録していることも多いタイプ。柔軟でブッキングが早く、カタログ・EC・Web など日常的な撮影に向きます。費用感も日本人モデルと大きく変わらないことが多いです。

招聘モデルは、海外のマザーエージェンシーから特定の案件のために招くタイプで、ハイエンドのファッション・ビューティーで起用されます。希少性と渡航コストの分だけ単価が上がり、拘束時間ベースで算定されるのが一般的。競合排除(競合あり)をかけると、ベースの2〜3倍以上になることもあります。

案件にどちらが必要か — これが予算とスケジュールを左右する最大の分岐点です。

発注の窓口 — 事務所か、キャスティング会社か

芸能事務所・モデル事務所に直接当たる方法(シンプルな案件では早く・安い)と、キャスティング会社を通す方法(複数事務所を横断して探し、スケジュール調整や交渉を代行)があります。短納期や、イメージが固まりきっていない案件ではキャスティング会社が有効です。

なお、有料で人材を斡旋するには有料職業紹介事業許可(厚生労働省)が必要です。許可のない「事務所」との取引は、発注側のリスクになり得ます。

国内案件と違う「リードタイム」

招聘モデルで最も効いてくる制約がビザです。外国人が日本で報酬を得て出演・モデル業を行うには、原則として「興行」の在留資格が必要で、招聘の場合は日本側のスポンサーが在留資格認定証明書(COE)を申請します。目安は1〜3か月、遅くとも撮影の2か月前には動き始めるのが安全です。観光・短期滞在の資格で報酬を伴う仕事をするのは違法 — ここはショートカットできません。

在住モデルは就労可能な資格を既に持っているため、このリードタイムを回避できます。これも「在住か招聘か」がスケジュールに直結する理由です。

ブリーフに入れておきたいこと

最初に決めておくほど、見積もりも進行も速くなります。

使用許諾 — 海外エージェンシーとの「感覚の差」

ここは海外側と最もズレやすいポイントです。欧米(特に非ユニオン案件)では、一括の買い取り(バイアウト)で広範な — ときに無期限の — 使用権をまとめて購入する発想が一般的。日本は違います。

日本市場は期間を区切ったライセンスを更新していく形が基本。リリースから1年を一つの目安に、期限前に延長を交渉します(延長使用料が発生し、当初費用の一定割合になることも)。無期限の買い取りを事務所が避けるのは、肖像・パブリシティ権が人格に根ざし永久に譲り渡せる性質ではないこと、そして特定タレントを永続的に管理し続ける保証ができないことが理由です。

使用は媒体ごとの許諾である点も重要です。Web のみの許諾は印刷や TV をカバーしません。許諾外の媒体への転用や、期間満了後の再使用は侵害になります。海外の発注元には、この「買い取りではなく更新」という前提を最初に共有しておくと、摩擦が減ります。

(肖像権・パブリシティ権は単一の法律ではなく判例上の権利です。最高裁「ピンク・レディー事件」(平成24年)が代表的な指標。本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。)

スケジュールの勘所

招聘モデルが混み合う時期 — 4月・8月・9月・2月は、避けられるなら避けると動きやすくなります。イベント系はタレントのスケジュールが3か月前にならないと出ないことも多く、半年前の問い合わせでも確定はできません。

バイリンガル・エージェンシーの価値

外国人タレントの起用には、英語での契約、多通貨での送金、ビザ・COE のリードタイム、そして海外の「買い取り」前提と国内の「更新」前提のすり合わせ — 国内案件にはない要素が重なります。現場には通訳を兼ねたバイリンガルのコーディネーターが入り、この一連を「つなぐ」のがエージェンシーの仕事です。

私たちが毎週、静かに担っているのはここです。

よくある質問

外国人モデルやタレントのキャスティングはどう進めればいいですか?
シンプルな案件ならモデル事務所・芸能事務所へ直接依頼するのが早く費用も抑えられます。タイトなスケジュールやイメージが固まっていない案件では、多数の事務所を横断して探し、スケジュール調整や交渉まで担うキャスティング会社が向いています。いずれの場合も、有料職業紹介事業許可を持つ事業者かを必ず確認してください。
在住モデルと招聘モデルは何が違いますか?
在住モデルは日本在住で柔軟に動け、複数事務所に登録していることも多く、費用も抑えめで、日常的なカタログやCM撮影に向きます。招聘モデルはハイエンドのファッション・ビューティー向けに海外のマザーエージェンシーから招き、拘束時間で料金が決まります。招聘の場合、競合排除を求めるとベースの2〜3倍以上になることもあります。
招聘モデルを起用するには、どれくらいのリードタイムが必要ですか?
招聘タレントは通常「興行」ビザで来日し、日本側のスポンサーが在留資格認定証明書(COE)を申請します。審査には概ね1〜3か月かかるため、撮影の少なくとも2か月前には動き始めてください。4月・8月・9月・2月の繁忙期は避けるのが無難です。
外国人キャスティングの依頼時、ブリーフに何を盛り込むべきですか?
役柄・ルック(年齢、国籍や言語の雰囲気、トーン、ファミリー設定の有無)と、媒体・地域・使用期間といった使用条件、競合排除の有無を最初に明示します。撮影日・拘束時間・ロケ地、予算レンジ、就労資格の有無に加え、食事・宗教・毛皮への配慮も伝えます。使用条件を早めに固めることが、後の再交渉や追加費用を防ぎます。
「仮押さえ」と「キープ」はどういう意味ですか?
仮押さえは日程を確保するだけで契約ではなく、キャンセル料も発生しません。決定優先では、空いている日程は先に確定させた側が取れるため、第一候補・第二候補を並行して押さえておくと安心です。いったん「ファーストキープ」を確定させると拘束力が生じ、反故にすると違約金や法的措置につながることがあります。